3D形態測定学

3D形態測定学

2016年日本古生物学会年会(福井) 夜間小集会

企画趣旨

近年のイメージング技術の発展と測定機器の一般化により, 表面データや3Dボリュームデータといった3次元的な形態データを取得するハードルは低くなっている. その結果,3次元形態データを利用した研究は分類群を問わず増えつつある. 本集会では,こうして得られた3次元形態データから生物学的に有用な情報を取り出すために 定量的解析をおこなった研究例を紹介する. それを踏まえ,3次元形態データを対象とした形態測定学的研究をおこなう上での課題とノウハウの共有をおこないたい.

プログラム

2016年6月22日 17:20 - 18:50
福井県立大学 共通講義棟1F (B会場) [Google Maps]

  1. 野下 浩司(東京大学)
    • 趣旨説明「3D形態データ周辺のツールや技術に関する最近の動向」
    • 講演「腹足類殻形態の3D形態測定学」
       有殻腹足類は殻口辺縁部に炭酸カルシウムを少しずつ付加させることで殻を成長させる.そのため腹足類の殻には成長の履歴,例えば成長線など,が残っている.多くの腹足類では外唇部で内唇部より大きく成長するため,らせん状の殻をもつ.つまり殻口辺縁部での成長勾配のパタンが殻の形態を決定するとみなすことができ,形態的な多様性は成長勾配という発生的な基盤の多様性として理解されるのが望ましい.ではどうやって殻の成長勾配は制御されているのだろうか? 近年の発生生物学的研究により殻の成長勾配パタンは成長因子であるDppの勾配に一致することが示唆されている.本発表では,腹足類位の殻形態自体を定量化する方法と腹足類の殻形態から成長勾配を推定する方法を提案し,その有用性を議論したい.
  2. 河部 壮一郎(福井県立恐竜博物館)
    • 講演「古脊椎動物と3D幾何学的形態測定学」
       幾何学的形態測定学が成立して以来,古生物の分野でもそれを取り入れた解析が行われてきている.しかし古生物学,特に古脊椎動物を扱う場合においては,標本数,破損・変形,大きさ,重さといった問題から,幾何学的形態測定学をうまく使い切れていないと感じられる研究が多くある.こういった問題を抱えながら,古脊椎動物学においてどのように幾何学的形態測定学と向き合ってゆけばよいのだろうか.本講演では,幾何学的形態測定学を用いた近年の研究の動向や具体例を示しながら,古脊椎動物学における幾何学的形態測定学の問題点とこれからの可能性について考えてみたい.

企画者連絡先

  • 野下 浩司 (東京大学)
    noshita at morphometrics.jp

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